海外出張に出かけると、きまって私はその土地のスーパーマーケット、百貨店、専門店を歩くことにしています。
その国のリアルな物価、テイスト、流行しているもの、
そしてなによりも、その国の現実に触れることができるからなんです。
十数年前にスペインに行ったときのことです。
早めの夕食をすましてホテルに入った私は、寝る前に少し空腹感を覚えました。
フロントに尋ねると、スーパーが近くにあるとのこと。
水も欲しいので、はじめてスーパーをのぞくことにしました。
私は、もともとスーパーに行くのは好きで、いろんな食材をみて
どんな料理にしたらうまいのかなんて想像するのが、好きなんですね。
一通りみ回って最後に水を買おうと思い、
飲料品のコーナーに行ってガスなしの水を買いました。
価格は、当時の価格で120ペセタ、今で言うと100円強くらいです。
そしてなにげなく隣においてあるワインのボトルの価格を見て腰を抜かしました。
一本なんと80ペセタ、今で言えば70円位なのです。
ヨーロッパでは、ワインは、水の代替品と言われているがその意味を肌で感じた一瞬でした。
驚きました。
我々が、日本で高い金を払って飲んでいるものは、いったいなんなんだってね・・・。
そのくらいワインは、庶民の生活の一部なのである。
特にラテン系のフランス、イタリー、スペイン、ポルトガル等では、顕著です。
こういうことは、現場を実際歩いてみないとわからないですね。
貿易商という仕事柄百貨店にも、必ずと言っていいほど行ってみることにしています。
そして現地で実際に買い物をするんです。
私は、買い物をする時、特にネクタイやシャツなどを買うときは、あることをします。
何をするかあなたは想像できますか?
その前にあなたにお聞きします。
女性は、誰を意識しておしゃれをしているかご存知ですか?
男性!いいえ違います。
女性のおしゃれは、実は同性である女性を意識して女性に対してしているのです。
えー!っと、思われましたか?
でも私が、ヒアリングをふくめ独自の調査をした結果そうだったのです。
ちょっと証明をしてみましょうね。
まず男性諸君、あなたがカップルで街を歩っているとします。
すると向こうから年かっこうが同じくらいのカップルが歩いてきたことを想像してみてください。
すれ違いざまにあなたが、最初に見るのは、女性ではないでしょうか?
その女性がきれいな人の場合、次にこんないい女を連れているのは、
どんな男だという感じで男性を見るのではないでしょうか?
次は、女性のあなたへ同じ質問です。
あなたが、すれ違いざまに見るのは、というより見定めるのは、同じく女性ではないでしょうか?
ただ男性陣とは、違う視点でありますが。
あなたが、見定めるのは、自分と比べて相手の美貌、ファションセンス、
持っているバッグ、履いている靴、している化粧などではないでしょうか。
男女の違いを表わしていて面白いものです。
ところが男性は、例外がないと言っていいほど女性を意識しています。
いかがでしょうか。
心の中では、あなたも男のファションが、異性である女性に向けたものであることについて異論は、ないだろう。
そうなのです。
男のファションは、対女性にむけられたものなのです。
さぁ ここまでは、理解していただけたでしょうか。
いかにして相手に自分事として感じてもらって巻き込むか?
百貨店にはいった私は、ネクタイ、シャツ売り場に行くのですが、
仕事上で商品を選択する場合は、そうでもないのですが、なぜか自分のものになると選べないのです。
あなたもそんな経験はありませんか?
そこで私は、そこにいる女性(もちろん店員さんです。)
できればちょっといいセンスの店員さんに声をかけるのです。
ネクタイをほしいのですがと。
すると判で押したように、これがいい、勧めてくれるのです。
あなたも経験あると思いますが、
そう言われれば言われるほど何を買っていいのかわからなくなることはありませんか。
彼女たちにすれば、我々が何を選ぼうが関係ないのです。
所詮は、他人事にすぎないのです。
だから私は、こういうときに彼女に対してあることを言うのです。
他人事から自分事に変える魔法のセリフです。
私が、言うのはこの一言である。
「もし私が、あなたの彼氏もしくはご主人であったらどれをしてほしいですか」
これである。
さらに
「あなたはとっても素敵ですね。
そんな貴女が選ぶものってどんなものなのかをしりたいのです」
とだめを押す。
その瞬間彼女の眼の色が変わるのです。
商売モードから一気に個人のセンスを問われるモードに変わるのです。
自分事に変わるのです。
それからの彼女の商品を選ぶ目は、売り子さんのそれではなくなります。
だってそうでしょう。
自分の美的センスを問われているのだから。
私は、ネクタイ、シャツ、スーツなどなど、ここ最近自分で選んだことがない。
それから一時間の間、彼女はネクタイ売り場のすべてのネクタイを真剣に見て、
ひとりで時にはじっと考えたり、私に合わせてみたりして3本をえらびだしてくれた。
「これ以上は、絞れないからこれからえらんでください」って言ってね。
私は、微笑みながら全部もらった。
彼女はウインクしながらこういった。
「今日からあなたは、私の彼氏よ」って。
しゃれているとは思いませんか。
私もそれは嬉しいねって言ってさわやかな気分でその場を去った。
私は、すべて女性に選んでもらったものを着ている。
男のおしゃれは、女性を意識したものなのだから。
現実それを身につけているとあまりはずれがない。
交渉事は、いかにして相手に自分事として感じてもらって
巻き込むことが重要なのかを、感じていただけましたか。
コツは、相手の自尊心、頭のよさ、人間性の素晴らしさ等を
問われているのだということを相手に感じさせることです。
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